小坪の海を未来へつなぐ 「アオリプロジェクト」が紡ぐ、地域の絆と海の恵み
小坪の海に、アオリイカがいる
「イカの王様」とも呼ばれるアオリイカ。実は、逗子市の小坪漁港から程近い小坪の海にも生息しており、地元の漁師さんたちが古くから漁を営んできました。
しかし近年、「磯焼け」によって海藻が失われ、アオリイカの産卵場所となる藻場が激減。漁獲量が年々減少するという深刻な問題が起きています。
「小坪里海里山プロジェクト」とは
この危機に立ち向かうべく生まれたのが、「小坪里海里山プロジェクト」です。令和4年(2022年)に立ち上がりました。
公園から切り出した間伐材(マテバシイ)を束ねて「アオリイカ産卵床」を作り、小坪の海底に沈めることで、アオリイカが卵を産みやすい環境を人工的に再現する取り組みです。
産卵床の土嚢には、コーヒー豆が入っていた麻袋を再利用するなど、SDGsの精神が細部にも息づいています。
多彩な顔ぶれが集う「チーム小坪」
このプロジェクトの最大の特徴は、実に多彩な主体が一丸となって参加していることです。
- マリンボックス100(小林さん) — プロジェクト全体のコーディネート
- 湘南漁業協同組合小坪支所(「たつ丸」「かず丸」「まさかり丸」など) — 産卵床の製作・投入・漁業の知恵の提供
- 逗子・葉山ダイビングリゾート(松永さん・ダイバーの皆さん) — 産卵床の水中固定・ダイビングサポート
- YAMARIA Corporation(中川さんなど社員の皆さん) — 技術支援・エギングマイスター(川上英佑さん)派遣
- 逗子市経済観光課(宮上) — 行政としての水産業振興、漁港管理
- 逗子市緑政課 — 間伐材の提供
- 東京海洋大学 — 産卵床投入作業への参加・学術的知見
- NTTドコモビジネス・MizLinx— 水中カメラの設置協力
- 小坪小学校 6年生 — 産卵床への想いの短冊作成・引継ぎ式
- 小坪保育園 — 産卵床の見送り参加
「マリンボックス100」の小林さんを筆頭に、「たつ丸」さんや「かず丸」さんら小坪漁協の皆様、「逗子・葉山ダイビングリゾート」の松永さん、そしてヤマリアからはマイスターの川上さんも参加し、地元のプロフェッショナルたちが一丸となって計4基の立派な産卵床を完成させています。
小坪小学校の子どもたちが主役に
このプロジェクトで特に注目したいのが、小坪小学校の6年生たちの活躍です。
6年生は1年間を通じてこのプロジェクトに参加。「アオリイカ産卵床」の製作を通じて、身近な海の生き物や海洋環境を学び、漁業者や市役所の職員、様々な企業で海にかかわる仕事に携わる人と「出会い」「関わりを持つこと」で、社会の一員としての自覚を育んできました。
令和7年度の児童たちの活動を紹介します。
春 産卵床に「想い」を込める
4月、新6年生になった子どもたちが、卒業した先輩から受け継いだ「想い」を短冊に描き、新たに製作したアオリイカ産卵床に取り付けて小坪の海に沈めました。アオリイカの特徴を捉えた上手な絵や、思わず笑顔になる素敵なコメントばかりで、賑やかで愛情たっぷりの「世界に一つだけのアオリイカのゆりかご」が完成しました。
秋 生きたアオリイカに触れる食育事業
11月には小坪漁港で最後のフィールドワークを実施。生きたアオリイカを「見て」「触れて」、活き締めの実演も体験しました。漁業者の「まさかり丸」の井上さんが腕を振るった「バター醤油炒め」を全員でいただき、「めっちゃおいしい〜!」と大好評でした。
目の前の小坪の海には、こんなにおいしいアオリイカが住んでいて、それを獲る漁師さんがいて、釣るためのエギを作る人がいてー磯焼けで少なくなっていくアオリイカを、みんなで力を合わせて守っているのだということを、子どもたちは体で学びました。
冬~春 卒業制作と「想い」の引継ぎ
6年1組は卒業前に、学んだことを漁業者・協力企業・逗子市・保護者・近隣住民を招いた発表会で披露しました。
6年2組は後輩の5年生に「引継ぎ式」を行い、1年間の学びと「想い」をしっかりと伝えました。1年前に先輩から引き継がれた時は何だかよく分からなかったけど、この1年の間にいろいろな人たちから学び、接することで社会の一員としての自覚に目覚め、しっかりと伝える姿——子どもたちの成長は、プロジェクト全体の大きな喜びとなっています。
NTTドコモビジネスとMizLinxによる水中カメラが捉えた、奇跡の瞬間
本当にアオリイカが来てくれるのか?
海の中では、電波も飛ばず、電源もないため、長期間の定点撮影をすることは困難です。それを海底モニタリング・スタートアップ企業のMizLinxと、NTTドコモビジネスがタッグを組むことで、約1ヶ月に渡り海底映像をリアルタイム撮影することに成功しました。
そしてカメラが捉えたのは、まさに夢見ていた光景でした。アオリイカが産卵床に卵を産み付ける瞬間、そして産み付けられた白い卵が波にゆらゆらと揺れる様子。
水中カメラの設置によって、産卵の瞬間をリアルタイムで記録・確認することができました。これにより、漁師さん・小学生・市職員など、関係者全員が海の中の変化を「自分ごと」として実感できるようになりました。
小坪小学校の6年生たちが短冊に込めた「たくさん卵を産んでほしい」という願いが叶ったことは、この映像により証明されました。
「想い」は次の世代へ
このプロジェクトの最も大切な価値は「想いの継承」にあります。6年生から5年生へ、そして次の世代へ、毎年確実に引き継がれていくこの活動は、小坪の海を守る「生きた文化」として地域に根付きつつあります。
こうして代々「小坪の海」と、そこに暮らす「アオリイカ」を大切に守っていくことを繋げていきます。
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