逗子市市民活動推進検討協議会報告書

ページ番号1006061  更新日 2023年3月2日

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逗子らしい市民協働型社会の実現に向けて

平成14年12月

はじめに

平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災を契機とし、平成10年12月に特定非営利活動促進法(NPO法)が施行された。震災の発生直後、行政が機能不全に陥ったなかで、被災者たちの生活援助をいち早く行ったのはボランティアの人達であった。このことは、社会の危機が発生した際には、行政に頼りきることなく、市民の自発的活動によって乗り切ろうという動きの現れである。
こうした自発的な市民活動は災害時に限らず、福祉、教育、環境など市民社会のあらゆる分野に着実に根付きつつあり、そのなかでNPO(Non Profit Organization)がいま大きな注目を浴びている。逗子市においても、過去から現在までの様々な市民活動、市民運動が本市の市民社会の形成に深く関わってきた歴史があり、今後も多様な自発的市民活動が予測される。
本協議会は、逗子市長の委嘱を受け、平成13年7月に発足した。以来、二ヵ年度に渡り16回の会議を開催し、逗子市の21世紀の市民社会の形成にとって、市民活動の動向が重要な役割を果たすという観点から、特に市民活動と行政との望ましい関係を探ることにより、市民活動と行政が対等なパートナーとして共にまちづくりに参画する逗子型「協働」を考えることを目的として検討を行ってきた。
本報告書は、平成14年3月に提出した中間報告書及び平成14年度の検討を踏まえ報告するものである。

1 市民活動団体(NPO)とは

最近、次第に注目を集めるようになった「NPO」という言葉ではあるが、その内容は多くの市民にとって周知のこととはまだ言えないと思える。したがって、本協議会はNPOとは何かという課題について考えてみたい。
特定非営利活動促進法第2条によれば、「特定非営利活動」とは「不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするもの」としかなく、NPOの定義や範囲には諸説あるが、米国ジョンズ・ホプキンス大学教授のレスター・サラモンのNPO定義を参考に考えてみると次のようになる。

  1. 公益性があること
    不特定多数の利益に寄与することを目的とする団体
  2. 民間であること
    制度的に政府から独立している民間の団体
  3. 営利を追求しないこと
    利潤追求を目的としないこと。事業活動から利益を生んでも良いが、それを構成員に利益配分しない団体
  4. 正式に組織されていること
    会則や代表者を有する組織的整備がなされている正式な団体
  5. 自己統治組織であること
    自分達の活動を自主的に管理できる能力があり、外部の組織によってコントロールされない団体
  6. 自発的な意思によるものであること
    自ら自発的なミッション(目的)を持つ団体

NPOとは県から認証を受けた団体(本市では平成14年12月現在で5団体)を指すことが多いが、本協議会では認証を受けていなくても上記のNPO定義を満たしていればNPO団体の対象範囲とした。したがって、本市には市民活動団体アンケート調査結果にあるように、様々な性格の団体(市が情報を得ている290団体及び社会福祉協議会のボランティアセンターに登録している39団体合わせて329団体)があり、これらの団体のうち上記の定義を満たしていればNPO団体としてその対象範囲に含めて検討する。

2 逗子型協働について

近年、地域の教育、福祉、環境などまちづくりのあらゆる場面において、市民と行政との「協働」(パートナーシップ)の必要性がいわれている。このことは地方分権が本格的に推進されることが予測されるなかで、良き地方自治体の条件が、従来の財政力や政策形成力だけではなく、新しく「地域力」とでもいうべきものが大きな比重を占めていく時代になると考えられる。
本市の21世紀の市民社会の形成にとって、市民活動と行政が対等なパートナーとして共にまちづくりに参画することが、「逗子型協働」であり、人口6万人弱という特性を生かした“顔と顔の見えるFACE TO FACE”の市民社会こそ、新しい地域力を育んでいくであろう。
しかしながら「協働」は、NPOと行政との関係で考えた場合、現在における課題ではあっても、市民自治の観点から考えた場合、通過点に過ぎないと考えられる。市内の様々なNPOの充実は、行政それ自体に刺激を与え、行財政改革を強い、必然的に行政の自己改革へとつながる。いわば自治体のNPO政策というのは、単なるNPO支援策ではなく、自治体の自己改革プログラムにほかならない。いいかえれば、逗子市民が従来の行政主導型の社会を続けることを望むのか、それとも市民が責任を担う市民主導型の社会を選ぶかという逗子市民の社会選択の問題である。
従来、長い間行政が独占してきた「公共」を今後は市民や市民団体が担い、行政はより小さな組織になることこそ21世紀の市民社会のありかたではないだろうか。そういう意味においても新しい市民活動といわれているNPOも単なるNon-Profit-Organizationではなく、新たに「公共」を担う市民組織としてのNew-Public-Organizationの性格を併せ持つことになるだろう。
遠くない未来において、逗子の市民社会が再構築され、行政が現在の姿を大きく変え、いわば「行政のNPO化」「行政の市民化」の状態になったとき、逗子の市民社会は新しい段階に入り、「市民自治」の領域に入るのではないだろうか。
本市の現況を踏まえながら、市民(活動)と行政との望ましい関係とは何かという観点から次頁以後の各個別の課題を検討する。

3 財政支援(補助金)

市内の市民活動団体は、その多くが資金面、活動拠点に関する課題を抱えているのが現状である。そのため、資金面においては行政への依存度はまだ高く、本来行政と対等な立場で自主・自立した活動を基本とする市民活動団体としては、あまり望ましいことではない。しかし、市民活動団体が担う社会的役割は増大しつつあり、今後、行政とまちづくりを推進していくためのパートナーを担うとすれば、行政はその活動を支援していくために必要な資金援助を行っていくべきである。
ただし、補助金の支出は、憲法89条や地方自治法第232条の2を逸脱することなく、公益性・公平性や透明性が確保された一定のルールに基づく手続きによるものでなければならず、本市の現行制度は必ずしもそのルールに沿ったものではない点がある。したがって、補助金については、市民活動団体への補助金の基本的理念及び現行制度の改善について検討する必要がある。

(1)本市の補助金制度の現状

市民活動団体への補助金に当たる制度としては、「逗子市の補助金の交付要望及び予算の執行に関する規則」があり、様々な活動分野の団体に交付されている。しかしながら、同規則の「特定のまちづくり事業の推進を図るもの」については「市民等が主体となって行う事業や活動が、市が目指す特定のまちづくり事業に対応するものに対する補助金」と規定されている以外に詳しい基準等は定められていない。
前述したように、補助金の支出は、公益性・公平性や透明性が確保された一定のルールに基づく手続きによるものでなければならず、さらにその使途や効果についての評価を行っていく必要がある。しかし、現行制度においては次のような問題点が挙げられる。

  • 「特定のまちづくり事業の推進を図るもの」についての根拠や基準が明確ではなく、また、審査過程についてもオープンになっていないこと
  • 事業補助ではなく運営費補助となりつつあること
  • 長期間継続して補助金を受けている団体が多く、既得権化することにより市民活動団体の新規参入が難しいこと
  • 認証NPO団体などは公益性が認められているにも関わらず交付されないこと
  • 補助対象分野に偏りがあること

(2)補助金制度の改善策

(1)のような現状から、既存の補助金制度は抜本的に見直すことが必要であり、公平・公正かつ透明性ある制度とするため、改善案として次のように提案する。

  1. 既存の補助金は、種別を問わず白紙とする。
  2. 審査基準の見直しを行う。その場合、市民参加で基準づくりをし、審査方法と一体で検討する。
  3. 市民が主体となって審査・決定し、どのような理由で決定したのかをオープンにする。さらに、既交付団体を含めた申請団体による趣旨説明を公開で行い、審査する仕組みを作る。
  4. 補助金申請は毎年の公募制を原則とし、そのための広報も強化する。
    補助金が何に使われ、どのような効果があったのかをオープンにするため、年度途中での進捗状況の把握、実績報告の公開及び評価システムを構築する。
  5. 会計的な監査だけでなく、5年毎程度で補助金存続の意義を問うための監査を実施する。

上記の改善策をもとにしたモデルケースが次のとおりである。

協働を推進する補助金 (仮称)『逗子型協働推進補助金』
  1. 基準づくり 協働を目的としているので基準設定から市民と行政が共同して作っていく必要がある。
    (仮称)市民活動推進協議会委員、市民活動団体関係者、公募市民、市職員によって構成される(仮称)補助金交付要綱策定委員会を立ち上げ、審査基準から審査方法までの検討を行い、要綱を制定する。
  2. 補助対象団体
    『開かれた活動をする団体』→公益性…
    制度の周知は広報やチラシ、HPなどを通じて徹底して行う。
    補助金申請は、毎年の公募性によるものとする。
  3. 補助対象となるのは事業費、調査費、研究費のみ
    →団体の維持管理経費や経常的な活動に係る経費は対象外。
  4. 審査方法→審査・決定までの過程をオープンにする
    • 既交付団体を含めた申請団体による趣旨説明を公開で行う。(公開プレゼンテーション方式)→各団体の活動を市民に周知するというメリットもある。
    • (仮称)補助金審査委員会による公平・公正な審査
      メンバーは市民活動団体からの公募委員、公募市民委員、学識経験者(市民活動研究者等)、商工会、市民活動センターのコーディネーター、市職員、(仮称)市民活動推進協議会委員
    • 各団体の補助金申請書類は情報公開の対象とする。また、審査結果についても公表することにより公平・公正、透明性の確保に努める。
  5. 効果の検証→補助金は何に使われ、どのような効果があったか?
    事業終了後の実績報告により補助金の使途や効果を検証する。できれば公開で実績報告会のような形で行う。事業効果を適正に把握するため、マニュアル化された評価システムを作っておく必要があるが、これも審査委員会同様に市民が主体となって作る。

(3)その他の財政支援方策

補助金という直接的な支援の他に、市民活動支援基金(NPO基金)、行政や民間の助成制度及び事業委託という方策が考えられる。
NPO基金については、補助金に比べ使途や目的等に関してある程度柔軟な助成が可能なこと、行政以外の市民、企業等から資金を集めるための受け皿となることなどから、市民活動団体が抱えている資金問題を解決するために今後検討すべき方策である。
行政からの事業委託については、協働を推進する上で最も有効な方策と考えられる。少なくとも、これまでのように単なる経費削減のための市民活動団体への事業委託ではなく、行政には無い専門性、柔軟性、地域性に期待しての事業委託を行うことにより、充分な効果を得ることができるはずである。なお、ここで留意すべきことは、前述したように事業委託=下請けとならないような対等なパートナーとしての事業委託に十分配慮すべきであることはいうまでもない。

4 活動拠点

市内の市民活動団体にとって、活動の場を確保することは大きな課題となっている。また、平成12年度に市が市民活動団体を対象に実施したアンケート調査(別添資料)においても、多くの団体が活動の場の不足を指摘している。これらの現状を踏まえると、「場の確保」は市民活動を活性化する上で重要な課題であるとともに、行政が支援することのできる施策の一つと考えることができる。したがって、市民活動を支援するための情報提供、コーディネート機能を持つ拠点が必要となってくる。
現在、市が進めている文化・教育ゾーン整備事業において、文化・教育施設内に市民活動支援スペースが設けられる予定である。開設は平成19年度を目途としているが、今後の市民活動の重要な拠点となりうるものである。開設までの約5年間、市民活動支援スペースが教育施設であることの妥当性、限界性等の基本的スタンスも含め、管理運営手法や機能について十分な検討を行っていく必要がある。しかし、その一方で、5年後を待たずに、市民活動センターの役割と機能を充実させる作業スケジュールを組み、先行させていく必要がある。そのためには、既存の施設を活用した拠点を設けることも検討すべきである。
本協議会としても委嘱の際に、市長からこのスペースの検討を依頼され、活動拠点の検討においては、ある程度文化・教育ゾーン整備事業を想定し議論してきた。基本設計では、情報コーナー、ミーティングスペース、展示コーナー、プレイルーム、事務室、2階には会議室もあり、市民活動センターとして基本的なハード機能を備えている。開設に当たっては、安易に直営又は民間企業への委託等をすることなく、ソフト面について十分に検討していくことを提案する。

市民活動センターの役割と機能

(1)全体のイメージ

市民活動センターの機能等を検討するためには、まず施設全体のイメージが重要ではないかと考えた。それぞれの委員が日頃漠然と頭の中にある「どんな場所にしたいか」というイメージを基に、本協議会では市民活動センターの基本的理念としての全体イメージを次のとおり設定し、これを基にそれぞれ必要な機能等を検討した。

人と人をつなぐところ
にぎわいがあり、元気のでるところ
誰もが利用できるところ

  • 自分たちと同じような活動をしている団体が他にあるのか、あるとすれば、いろいろな情報を得ることができる。
  • 何か始めたいと思ったときに一人で飛び込むことができ、そこに行くと元気になるような場。
  • 多様で自立した考えをもつ市民・市民活動団体が施設の担い手となるべき。
(2)必要な機能

市民活動センターの備えるべき機能としては、「情報スペース」、「作業スペース」、「打合せスペース」、「魅力あるコーディネーター」に分類することができる。

  • 情報スペース
    情報スペースには情報センター機能を持たせサークル、ボランティア等の活動状況を把握できるようにするとともに、市内にある関連施設とのネットワーク化を図る。また、パソコンによる電子情報とは別に各種団体情報の掲示スペースや民間の助成金情報等を発信することも重要な役割である。
  • 作業スペース
    作業スペースは主に団体の活動の場としての機能として、印刷機やコピー機、貸しロッカー等を整備し、有償であってもできるだけ自由に使えるよう図るべきである。本市では現在、福祉会館がこのような機能を備えており、かなりのニーズがあることから欠かすことのできない機能である。
  • 打合せスペース
    打合せスペースは、予約なしで使えるフリースペースと予約制の会議室に分けられる。前者は市民交流の場、にぎわいのある場としての機能を持ち、一人でも気軽に立ち寄れるスペースであることが求められる。後者は市民活動団体が恒常的に抱えている場の確保を支援する機能として、違った意味を持つスペースである。また、運営方針とも関連するが、使用に際し有料にすべきか、無料にすべきかという問題が生じるが、公設市民運営を基本方針とするならば適正な料金を徴収すべきである。
  • 魅力的なコーディネーター
    魅力的なコーディネーターは、センターの自主事業を行う場合には特に重要な役割を担うことになる。コーディネーターは個人でも団体であっても構わないが、講座・研修等の自主事業の企画、実施やサークル・ボランティア情報に関する案内や相談及び行政との仲介的役割を担う。市民活動センターをただの箱としてではなく、血の通った施設にするためには、使う側の立場で運営することにより、逗子らしく、使いやすく、市民が主役であることを実感できるようなものにすることが求められる。そのためには、市民サイドに立ったコーディネーターの存在が不可欠となる。
(3)管理運営

前述のコーディネート機能とも関連する部分で、管理運営の基本方針は施設の全体イメージを達成する上で特に重要である。まず、運営形態については、使う立場を理解できる、市民が主体であることが実感できるようなものが望ましい。したがって行政から独立した存在として市民による自主的な運営を行うことにより、行政と対等な関係が保たれ、自主的に方針決定できるような形態である必要がある。
具体的に運営主体として考えられるのは、市民(公募、団体代表等)によって組織する(仮称)運営委員会である。この場合のメリットとしては、様々な分野の専門的能力をもつ人や自分たちで使いやすい施設にしていこうという意欲をもった人が集まることにより、市民活動の分野にとらわれない総合的な運営が可能であるという点である。ただし、運営委員会は実際にセンターを運営するために必要なノウハウを習得し、それに基づき試行的にワークショップ等を行ってみる必要がある。したがって、市民活動センターの開設時期から逆算して十分な期間をとって準備することが望ましい。このようにノウハウを身につけたスタッフは運営委員会にとっては中心的な存在になると思われるが、できれば組織の硬直化を防ぐためにも任期を決めて運営していくことを基本方針としたい。
次に、運営費については、市民活動が自主運営・自主管理を基本理念としていることから、運営費に関しても独立採算を目指していくことが基本となる。ただし、市民活動団体の多くが資金面における課題を抱えている現状を踏まえると、当面は委託費(補助金)、施設利用料及び事業収益で運営することになると考えられる。行政から独立した存在を保ちつつ、委託費で運営するということは、結局は行政主導ではないのかという議論もされたが、運営委員会の設立趣旨及び委員が主体的・積極的に参加していることから、自主・自立のスタンスに変わりはなく、委託費を受けたからといっても従来からある行政と受託団体の関係(事業委託=下請け)とは違った対等なパートナーとしての委託と考えられる。

(4)既存施設の活用

既存施設を市民活動の拠点として活用することにより、情報発信の場を増やすことにつながり市民活動はさらに活性化することが考えられる。したがって、用地やコスト面から新設は難しいにしても、既存施設の活用については行政も積極的に情報収集し、情報提供していく必要がある。活用できる施設としては、地域活動センター、商店街の空き店舗、公民館、学校余裕教室等が考えられる。また、(3)で述べた(仮称)運営委員会の試行としてのワークショップ等もこれらの施設で行うことも考えられる。

5 市民活動の総合窓口

総合窓口については、本協議会の委嘱の際に、市長からボランティアの総合窓口の検討を依頼されたのを受け、その範囲をさらに広げて市民活動全体の総合窓口のありかたについて検討を行った。対象としてはNPO、市民活動団体、ボランティア、個人による活動を想定した。
現在、福祉関連のボランティア団体は社会福祉協議会のボランティアセンターが窓口になっている。また、個々の市民活動団体はそれぞれ担当する市の所管課が窓口になっているため、横のつながりができにくく、また、事務の繁雑さや人事異動等によって専門的な相談やコーディネートが難しい状況も起こり得る。このような現状を踏まえると、やはり行政からある程度独立した機関として総合窓口を設置する必要がある。
中間報告において、活動拠点に必要な機能として「情報スペース」、「作業スペース」、「打合せスペース」、「魅力的なコーディネーター」を挙げた。この中で情報スペースと魅力的なコーディネーターは総合窓口の機能と密接に関連するものであり、活動拠点の管理運営手法を含め再度検討することとなった。

(1)総合窓口に何を望むのか?

市民活動の総合窓口を検討するに当たっては、そこに何を望むのかを考える必要がある。単に施設の受付や案内のみを行うのか、それとも一元的な情報提供までは行うのか、あるいは更に一歩進んで相談やコーディネートまで行うのかというように、どこに力点を置くのかを考えることとした。
まず、一元的な情報提供についてはデータベースさえあれば、経験の有無を問わず誰にでもできるものである。さらに相談やコーディネートまで行う場合には、市民活動のことや他のセクターのことがわかっている人でないとできないので、かなり専門性が必要になってくる。コンサルティングになるとさらに専門性が必要となる。優秀なコンサルタントというのは、解決策を提示できるかということが重要となるので、そういうコンサルティングのできる人を育成する必要がある。
このように、総合窓口といっても、様々な機能があり、運営体制も大きく違ってくることから、やはり逗子の総合窓口には何を望むのか、どういうものを作りたいのか、そのために必要なことは何なのかについて議論した。

(2)逗子に必要な総合窓口とは?

議論の中で委員から出された意見として、「実際にNPOを立ち上げようとするときなどは、一度では手続きが終わらないことが多い。そういうときに一箇所で教えてくれるようなところが市内にあると非常に便利である。」というものがあった。やはり、逗子は小さなまちだからこそ、行政の窓口を一本化し、総合窓口として市内に一箇所、そこでは手続きから相談まで全てが解決できるような機能が必要なのではないか。当然、スタッフにはある程度の知識と経験が要求されることになる。本協議会としては、概ねこのような方向性で考えがまとまった。
以上のことから、本協議会が提案する逗子に必要な総合窓口機能を次に掲げる。

  • 施設受付・案内
  • データベースを用いた一元的な情報提供
  • NPO等に関する一般相談、コーディネート及び活動支援

上記までは常勤スタッフが対応

  • NPOのマネジメント講座とその後に続くコンサルテーションの実施
    (専門分野ごとに専門の相談員が対応するので、将来的な施策となり、自主事業的な性格のものである。)

(3)総合窓口と社会福祉協議会のボランティアセンター、その他民間機関との関係は?

ボランティアセンター等の民間機関とは常に連携を図っていくべきであり、統合すべきではないと考える。民間機関はこれまで培ってきたノウハウや関係団体とのつながりを持つばかりでなく、それぞれの特徴を生かした運営をしているという点で重要なものである。したがって、行政は積極的に連携を図り、より有効なサービスを提供していくことが必要である。

(4)管理運営との関係は?

総合窓口を市民活動センター等の施設に置く場合、一般的には施設を管理運営する団体のスタッフによって運営されることになる。ここで問題となるのは、管理運営団体が前述の市民(公募、団体代表等)によって組織する(仮称)運営委員会のような団体であれば情報提供や相談に対応することができるが、例えば市が直営方式により運営する場合は雇用する窓口スタッフの適性を重視しなければならない。さらに自主事業を実施する場合等、スタッフ間の連携をとることができるのか疑問がある。以上のことから、総合窓口の設置に当たっては、NPO団体等による市民運営(委託方式)が望ましいのではないか。

(5)モデルケース 2010年のずし

以上のような議論を経て、最後に『2010年のずし』と題し市民活動拠点のイメージをより明確にするため、総合窓口に限定せず市民活動拠点の運営についてモデルケースを想定し検討を行った。なお、モデルケースとして2例作成したものを巻末に参考資料として掲載した。

6 (仮称)『市民活動と市民参加を推進する条例』について

(1)条例に対する考え方

市民活動を活性化することを目的とする条例制定については、その条例の基本的な理念や位置付けが重要な前提であり、その内容によって条例制定の必要性が確定されてくると考えられる。地方自治体の条例は公定力を持つため、市民活動にとっても行政にとっても一定の効果を果たすと思われる。もとより市民活動を活性化するための条例であり、これにより市民活動の自発性や自主性を損なうことは間違ってもあってはならず、その内容については細心の注意を払うべきであることはいうまでもない。
条例の理念と位置付けは、次の3つに大別できる。

  1. 市民活動推進条例的なもの
    現在、県内の多くの市で採用されている型の条例で、従来型の市民活動を行政が応援する趣旨が原則である。市民と行政が対等なパートナーであることを固定的な役割分担とするいわゆる「協働」を最終目的とする考え方で、市民や地方自治体の自己改革的な要素が少ないのが特徴といえる。
  2. 市民参加条例的なもの
    市の重要な施策や条例などに関して、市民の意見等を必ず組み入れるルールを条例化する。これは「協働」を単なる通過点と考え、結果的に市民と行政双方の役割と責任に関する変革プログラムとなる。
  3. 市民自治条例的なもの
    地方分権と市民自治を基本とし、市民参加条例的なものを更に進めた形の条例で、市民(組織)が地域のすべての施策等を提案・決定し、警察や消防等の専門分野以外の行政組織は限りなく縮小する。ただし、この条例は地方分権と市民自治の長期的な未来型であり、当然憲法や地方自治法の改正が必要となると思われる。

(2)本協議会の条例に対する考え方

条例に対する前記3つの考え方の中から、Aの市民参加条例的なものを制定する必要があると考える。行政が「公共」を独占することが問われている現在、市民参加、住民自治の土壌が豊かに息づいている本市にとって、市民自身が「公共」に関わる意思決定過程に関与していくことが地方分権=市民分権の前提であると考えられる。また、現段階では憲法や地方自治法等に抵触しない範囲での条例制定を考えるべきである。

(3)条例の骨子案

1 前文の作成(条例の理念と位置付けの明記)
1 目的、理念、定義等の明確化
1 市民、NPO等(事業者)、市の責務と役割の明確化
1 市民参加のルール(市民協議会の組織、役割、運用等)
  1. 市民参加を導入すべき事務事業(例示)
    • 基本構想・基本計画の策定
    • 主要な計画の策定・改訂
    • 重要な政策決定
    • 重要な公共施設の構想・設計
  2. 市民参加導入手法(例示)
    • 住民投票
    • 市民意識調査(アンケート)
    • 意見・提案の募集
    • 懇談会の開催
    • ワークショップ・公聴会等の開催
1 NPO基金(市民活動支援基金)の設置と運用
  • NPO基金は市の歳入とする。(公金となれば税控除が可能)
  • NPO基金の管理・運用は市民協議会とし、その具体的な管理・運用については別途規則を定める。
  • NPO基金を管理・運用する市民協議会は、常に公平、情報公開を心掛ける。

(4)条例制定のスケジュール

本協議会の最終報告後、新たに市民主導型の条例制定委員会を設置し、草案づくりを行い、その後公聴会、ワークショップ、地域集会等あらゆる機会を設けて市民の意見等を聞いた上で提案する。なお、この条例は市全体に関わる重要な条例となることからも、単に市民部のみの所管とせず、企画部の所管又はプロジェクトチームを設置するなどして全庁的に対応していくことが望ましい。

おわりに

平成13年7月17日にスタートした市民活動推進検討協議会は、16回の会議を経て最終報告書をまとめることができました。市民活動と行政との望ましい関係とは何かという課題は、今後本市の市民生活のあらゆる場面で問われる重要な問題であるという認識に立ち、各委員は多忙にもかかわらず熱心に協議し、宿題を持ち帰り、たくさんの資料にあたりました。
この報告書が行政の形を変え、市民自らの自己改革と自己責任を促し、ひいては逗子の市民自治に貢献することを委員一同願っております。

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