長柄桜山古墳群 ながえさくらやまこふんぐん

ページ番号1004578  更新日 2024年4月3日

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逗子市と葉山町の境界線上に位置する、ともに全長90m前後の、現存する遺構としては神奈川県内最大級の規模を有する2基の前方後円墳です。逗子市教育委員会と葉山町教育委員会が協力して保存整備を進めています。

※ご注意
史跡の近くにトイレはございません。あらかじめ駅などのトイレをご利用いただくか、第2号墳のふもとにある蘆花記念公園入口もしくは六代御前の墓にある公衆トイレをご利用ください。

史跡長柄桜山古墳群第1号墳オープニングセレモニー

史跡長柄桜山古墳群第1号墳の供用開始にあたって、逗子市制 70 周年・葉山町制 100 周年記 念事業としてオープニングセレモニーをおこないます。

開催予定

日時

令和6年4月 20 日(土曜日)10時00分~11時00分

場所

史跡長柄桜山古墳群第1号墳 前方部前面広場

 内容 

セレモニー:主催者あいさつ、テープカット

現地ご案内:整備内容について市町担当者が解説

主催

逗子市教育委員会・葉山町教育委員会

協力

長柄・桜山古墳をまもる会
  • 少雨決行ですが、中止の場合はあらためてホームページ等でお知らせします。
  • 駐車場等はございませんので、公共交通機関をご利用いただくか徒歩でご来場ください。近隣の方のご迷惑になりますので、付近での駐停車もご遠慮くださいます ようお願いいたします。
第1号墳
空から見た第1号墳

I.これまでの経緯

発見

長柄桜山古墳群は、平成11年3月、葉桜団地西側の山頂(現在の第1号墳)で、携帯電話の中継基地建設工事に伴う小規模な伐採及び整地が行われた際、近隣にお住まいだった故東家洋之助さんが埴輪片を発見したことをきっかけにその存在が公に知られるようになりました。

また、同年4月、県内の考古学研究者が、その西側約500mの丘陵頂部(現在の第2号墳)も同様の古墳であることを指摘し、その後の試掘調査、測量調査、範囲確認調査等を経て、第1号墳と同様の古墳であることが明らかとなったのです。

写真:第1号墳の全景(2013年12月)
現在の第1号墳 令和4年(2022年)

写真:葉山桜山団地西側の山頂 2005年
発見後間もない頃 平成17年(2005年)
写真:葉山桜山団地西側の山頂 2013年
整備工事着手直前 平成25年(2013年)

史跡指定へ

逗子市、葉山町は、神奈川県とともに「(仮称)長柄・桜山古墳群に関する三者協議会」を設置して国史跡指定を目指す検討と事務的手続きを進め、市民・町民や関係各位の強い後押しもいただいて、平成14年12月19日に「長柄桜山古墳群」として指定を受けました。

史跡指定状況

名称
長柄桜山古墳群
所在地
  • 第1号墳 神奈川県逗子市桜山7丁目、神奈川県三浦郡葉山町長柄字芳ヶ久保
  • 第2号墳 神奈川県逗子市桜山8丁目、神奈川県三浦郡葉山町長柄字下小路
所有者
逗子市、葉山町
指定
平成14年12月19日 国史跡指定(文部科学省告示202号)
指定理由
三浦半島西岸の付け根に位置する、2基の前期大型前方後円墳からなる古墳群。畿内地域と東日本を結ぶ太平洋側の交通の要衝にあり、古墳時代における関東と畿内を結ぶ交通や、南関東の地域の情勢を考える上で重要である。
面積
  • 第1号墳6,869.32m2(逗子市:3,438.35m2、葉山町:3,430.97m2
  • 第2号墳8,208.11m2(逗子市:5,440.45m2、葉山町:2,767.66m2
地図:第1号墳
史跡指定範囲と墳丘推定範囲第1号墳

地図:第2号墳
史跡指定範囲と墳丘推定範囲第2号墳

保存整備に向けて

平成15年度には、本史跡を取り巻く自然環境、社会環境等の各種条件を整理して「国指定史跡長柄桜山古墳群整備基本構想」を作成し、今後の整備の基本的方向性を示しました。これを受け、平成16年度には3名の考古学研究者による国指定史跡長柄桜山古墳群調査指導委員会を設置し、今後の整備に必要な地下遺構の情報収集を目的とした発掘調査について具体的な検討を開始し、平成18年3月に発掘調査全体計画を定めました。またこの間、平成16、17年度の2ヵ年で指定地の公有化が完了したため、平成18年度から発掘調査に着手、平成21年度には計画していた第1号墳の調査を終え、墳丘の構造や埴輪等に関する多くの貴重な成果を挙げています。

II.史跡の概要

位置と地形

長柄桜山古墳群は、神奈川県南東部、三浦半島の付け根にある逗子市と葉山町にまたがる標高50〜120mの低い丘陵上に立地し、東京から50km圏内、横浜から20km圏内に位置しています。最寄り駅のJR横須賀線逗子駅からは南方へ約2.5km、京浜急行電鉄逗子線逗子・葉山駅から南方へ約1.8kmの距離です。

周辺の丘陵では、昭和40年代以降の宅地開発により地形が大きく改変されており、第1号墳東側まで造成が及んでいますが、その後古墳群の周辺一帯には各種法令に基づき開発行為に対する制限がかけられたことから、史跡とその周辺は現在までなお豊かな自然環境が保全されています。

指定地内にはさまざまな樹木が茂っており、眼下の視界はほとんど遮られていますが、第1号墳の後円部墳頂から東には東京湾が、第2号墳前方部から西には相模湾を眺めることができる絶好のロケーションにあります。また、指定地内を東西に走るハイキングコース「ふれあいロード」が整備され、近隣住民やハイカー達に利用されています。

写真:海から見た様子
海から見た古墳群の立地する丘陵

周辺の遺跡

長柄桜山古墳群が発見されるまで、逗子市・葉山町を含む三浦半島地域では、前期古墳の存在は確認されていませんでした。
一方、田越川左岸の段丘上の平坦面や、田越川の支流池子川右岸の沖積微高地上、また葉山側では沿岸部の一色・堀内地区の砂丘上などを中心に、弥生時代から古墳時代前期の遺跡が点在しています。とくに逗子湾からやや奥まった田越川中流域左岸の段丘上では、弥生時代中期後半から後期の集落跡のほか、古墳時代前期から後期の集落跡が重なる複合遺跡で、一般集落から出土することはまれな石釧が出土したことでも知られる持田遺跡(5)や、土器焼成遺構や粘土採掘坑など土器生産を行っていた古墳時代前期の集落跡である沼間ポンプ場南台地遺跡(10)や菅ヶ谷台地遺跡(9)など、長柄桜山古墳群の築造に並行する時期の集落跡が集中しています。また、田越川右岸の池子川流域には弥生時代から古墳時代のほか、各時代の遺跡が確認された池子遺跡群(11)が存在します。池子遺跡群からは、古墳時代の鏡片や銅鏃など、やはり一般集落からの出土は珍しい遺物が出土していることも注目されます。

写真:石釧
石釧(持田遺跡出土・市指定文化財)
池子遺跡群資料館で展示中

葉山側では沿岸部の砂丘上を中心に、葉山町No.2遺跡(13)や三ヶ岡遺跡、御用邸内遺跡などで古墳時代前期の集落遺跡が発見されています。

また、奈良時代以前の古東海道については、『古事記』『日本書紀』に記載されたヤマトタケルの東征説話を根拠にその復元的研究が進められています。説話自体の史実性は薄いですが、そのルートは当時の実際の交通路をある程度反映したものと思われ、概ね現在の横須賀市走水付近から東京湾を渡海したと考えられています。半島内のルートについてはさまざまな想定が可能ですが、地形あるいは遺跡分布の点からみて、田越川流域を遡上して東京湾側へ到るルートは相模湾と東京湾を結ぶ重要な交通路であったと考えられます。

地図:周辺遺跡
周辺遺跡図

1 桜山うつき野遺跡 2 地蔵山遺跡 3 逗子市No.118遺跡 4 内藤屋敷跡 5 持田遺跡 6 台山稲荷下遺跡 7 沼間台遺跡 8 沼間南台遺跡 9 菅ケ谷台地遺跡 10 沼間ポンプ場南台地遺跡 11 池子遺跡群 12 池子桟敷戸遺跡 13 葉山町No.2遺跡

発掘調査

長柄桜山古墳群では、史跡指定前の平成11、12年度に試掘調査、範囲確認調査を、指定後の平成18年度から平成21年度まで、史跡整備に必要な情報収集の一環として、第1号墳の発掘調査を実施しました。

写真:埴輪1
埴輪の出土状況(第1号墳くびれ部外側)

第1号墳

墳丘の規模

墳長91.3mを測り、前方部を南南西に向けて構築された前方後円墳です。墳丘の遺存状態は総じて良好ですが、葉桜住宅造成の際に後円部北側の一部が失われています。後円部の西半は正円形を描きます、東半はいびつな形をしています。後円部墳頂部は西から東に向って約60cm下がっていますが、古墳築造以降に地すべりが起こった結果であることがわかっています。前方部は現況地形では先端部が撥形に広がっていますが、中世後期以降に墳丘の一部が削平を受けており、本来は幅広の台形状であったことが確認されています。

墳丘の高さは後円部で約7.7m、前方部で約4.9mを測り、墳裾は後円部から前方部にかけて緩やかに下がっています。そのため後円部と前方部の墳頂部間比高差は約3.25mとなります。

墳丘の構造

墳丘の構築にあたっては、地山の逗子層〜黒色土層を削り出して成形した後、上部に約1.5mの盛土を施して築き上げています。なお、前方部前面のみ墳裾から断面三角形状に盛土を施していることもわかっています。後円部は三段、前方部は二段の段築となっており、葺石は施されていません。

写真:墳裾
くびれ部付近の墳裾のようす

埴輪

墳丘斜面部〜墳裾の覆土中からは円筒埴輪及び壺形埴輪片が出土しています。後円部墳頂部平坦面の縁辺には、築造時の状態を保った埴輪基部が都合5個体確認されており、埴輪列が巡っていたことが明らかになっています。隆起斜道部から前方部墳頂部及び段築テラス上には埴輪列は遺存していませんでした。

※出土品の一部は、池子遺跡群資料館、葉山しおさい博物館で展示しています。

写真:埴輪2
出土した円筒埴輪

埋葬施設

後円部墳頂部中央のやや東よりに、墳丘主軸から東に約15度傾いた状態で、幅約1.6m、長さ約7mの陥没坑が確認されています。陥没坑の一部を掘り下げたところ、墳丘面から約1.5m下に粘土槨が1基構築されていることが確認されました。後世の掘削痕跡は認められなかったため、主体部は未盗掘であると考えられます。

写真:陥没坑1
確認された陥没坑(黒い部分)
写真:陥没坑2
陥没坑の断面と粘土槨

第2号墳

規模

墳長約88mを測り、前方部を西に向けて構築された前方後円墳です。墳丘の遺存状態は総じて良好ですが、後円部墳頂部には後世のものかと思われる塚状の高まりが存在します。
墳丘は、後円部で高さ約7.3m、前方部で約8.7mを測り、墳裾は後円部から前方部にかけて緩やかに下がっています。そのため後円部墳頂部平坦面と前方部の比高差は約0.7mとなっています。

構造など

ごく小規模な発掘調査しか行われていないため、詳細は不明ですが、墳裾付近は地山の逗子層を削り出して成形しています。墳丘斜面部の盛土の構築状況や段築の有無については明らかではありませんが、第1号墳にはみられない葺石が存在することが大きな特徴です。覆土中からは円筒埴輪及び壺形埴輪片が出土していますので、埴輪列の存在が予想されます。また、埋葬施設の位置や構造、規模等も明らかではありません。

写真:第2号墳の後円部
第2号墳の後円部

III.今後の保存整備

整備基本計画

逗子市教育委員会と葉山町教育委員会では、遺構保存と公開活用の実現に向けた整備基本計画をまとめました(平成23年3月)。
本計画は、基本的な整備内容や手法等について検討するとともに、全体的な事業の概算費用やスケジュールを示すことで、行政として実現可能な整備の道筋を具体化しようとするものです。

ボランティアパトロールなど

発見直後から、郷土の貴重な古墳を守るため、市民町民による自主的な活動を端緒とするパトロール活動が開始され、様々な経緯を経てその活動が今日まで続けられています。また、「長柄桜山古墳を守る会」の活動など、地元の貴重な歴史遺産を守る市民町民の取り組みは、今後の整備活用に向けて大きな力となっています。

古墳ボランティアパトロールの活動に興味、関心がおありの方は、逗子市教育委員会社会教育課、葉山町教育委員会生涯学習課にお問い合わせください。

IV.アクセス

地図:案内図


※駐車場はありません。近隣住宅地内での路上駐車はご遠慮ください。

JR逗子駅前バスのりば

4番

逗17系統「葉桜」行き 「葉桜」停留所下車
→第1号墳へ徒歩約10分(比較的平坦)

2番

逗11系統「葉山町福祉文化会館」行き または 逗12系統「葉山(一色)」行き 「富士見橋」停留所下車
→蘆花記念公園を経て第2号墳へ徒歩約20分(険しい上り道)

見学に来られるみなさまへ

古墳は近隣の方々のご理解とご協力をいただきながら保存整備しています。静かで快適な住環境を守るため、以下の点にご協力ください。

  • 靴底についた泥や落葉で住宅地の道路を汚さないようご配慮ください。
  • 住宅地内の路上に長く立ち止まらないでください。
  • 近隣の宅地内に立ち入らないでください。
  • 住宅地内の路上に自動車やバイクを駐車しないでください。

V.参考資料

発掘調査概要リーフレット

第1号墳の発掘調査のうち、平成18〜20年度の成果をとりまとめたものです。

第1号墳の発掘調査の最終年度で、埋葬施設の位置などを確認しました。

刊行図書

写真:刊行図書1

(1)『長柄・桜山 第1・2号墳 測量調査・範囲確認調査報告書』
神奈川県教育委員会・財団法人かながわ考古学財団
平成13年3月 350円


写真:刊行図書2

(2)『シンポジウム 前期古墳を考える 長柄・桜山の地から/国史跡指定記念講演会 未来に活かす史跡整備を考える 記録集』
逗子市教育委員会・葉山町教育委員会
平成15年3月 300円


写真:刊行図書3

(3)『国指定史跡長柄桜山古墳群第1号墳発掘調査概要報告書(平成18年度〜平成20年度)』
逗子市教育委員会・葉山町教育委員会
平成21年3月 非売品


※情報公開課(市庁舎1階)、市立図書館2階郷土資料コーナーで閲覧できます。
(1)、(2)のお求めは、情報公開課(下記ページを参照ください)

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教育部社会教育課文化財保護係
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