登録有形文化財建造物
たとえば街並の景観をかたちづくる上で重要な役割を果たしている、風趣に富んだ建物であっても、昭和の前期頃(終戦前後)までに建てられた比較的新しいものは、所有者の代替わりなどの際に取り壊されてしまうことが少なくありません。厳密な規制を伴う従来の「文化財指定制度」(国、県、市の指定)にはなじまないそうした建造物を、資産として活用しながら後世に保存していこうという所有者等を支援する目的でつくられたのが、国の「文化財登録制度」です。
ここでは、逗子市内に所在する登録物件8棟と、同じような価値をもつと考えられる1棟の建造物について、簡単にご紹介します。
参考文献:神奈川県教育委員会2000.3『神奈川県の近代和風建築−神奈川県近代和風建築調査報告書−』
1.長島孝一家住宅主屋
平成13年8月28日国登録有形文化財第14-0053号
- 所在地:逗子市新宿1丁目
- 建物概要:木造平屋建、瓦葺
- 建築面積:181m2
- 建築年代:明治33年(1900年)頃
逗子で最初に別荘地がひらかれた田越川界隈に、法律家 長島鷲太郎が葉山別邸として建設したものです。木造平屋建の和風別荘で、南面に起り破風の玄関庇を付け、東面に座敷と広縁、北に離れを配しています。現在の建物は、大正12年(1923年)の関東大震災で被災した後、配置の角度を90度振って復旧されたと伝えられますが、逗子市内に残る数少ない海浜別荘遺構のひとつとして貴重な建物です。
※見学はできません。
2.旧脇村家住宅主屋
平成22年4月28日国登録有形文化財第14-0164号
- 所在地:逗子市桜山8丁目2241
- 建物概要:木造二階建 瓦葺 和洋折衷式数奇屋造
- 建築面積:247.53m2
- 建築年代:昭和9年(1934年)
三井物産常務取締役として明治後半期に活躍した藤瀬政次郎の夫人、秀子の逗子別邸として建てられ、後に経済学者 脇村義太郎が終の棲家としました。設計施工は清水組です。基本は数奇屋造りの和風建築ですが、西側のベランダや北側の玄関の丸窓・暖炉煙突、内部の洋間などの随所に洋風の洒落たデザインを取り入れた和洋折衷の建物です。逗子が別荘地から住宅地へと転換した戦前期を代表する貴重な建築遺構と言えます。
※旧脇村義太郎家住宅については、通常の見学はできませんが、市民によるボランティア清掃等を随時行っています。ボランティアの内容については、緑政課へお問合せください。
関連情報リンク
3.旧正力家別邸主屋、蔵、表門
旧正力家別邸主屋 令和4年2月17日国登録有形文化財第14-0305号
- 所在地:逗子市新宿3丁目
- 建物概要:木造二階建 瓦葺
- 建築面積:200m2
- 建築年代:昭和前期(昭和6年以前)
逗子海岸の北に位置する住宅で、昭和6年に実業家正力松太郎が購入しました。東の玄関から南庭に面して部屋を雁行して並べ、南東に昭和中期に改装した応接間、南西に書院造の座敷を配しています。二階の洋室は、庭を臨む三面にガラス窓を入れて開放的な造りとし、かつては海を眺望できました。洋室の外部には欄干付の縁を巡らし、外観を和風にまとめた良質な住宅です。
※見学はできません。
旧正力家別邸蔵 令和4年2月17日国登録有形文化財第14-0306号
- 所在地:逗子市新宿3丁目
- 建物概要:鉄筋コンクリート造二階建 瓦葺
- 建築面積:24m2
- 建築年代:昭和34年(1959年)
主屋西側に位置します。切妻造妻入の東西棟で、東面に戸口を設け、各階南北面中央に窓を開けて鉄扉を備えています。外壁はリシン吹付け、腰は刷毛引き仕上げ。主屋西側の景観をつくる建物となっています。
※見学はできません。
旧正力家別邸表門 令和4年2月17日国登録有形文化財第14-0307号
- 所在地:逗子市新宿3丁目
- 建物概要:木造 銅板葺 左右袖塀付
- 建築規模:間口1.8m
- 建築年代:昭和中期
主屋の東に位置し、通りに東面する数寄屋風の腕木門です。主柱と冠木は皮付丸太で、両脇に袖塀を付して屋敷表の構えを整える役割をはたしています。
4.須藤家住宅主屋、旧ボイラー室
須藤家住宅主屋 令和4年2月17日国登録有形文化財第14-0308号
- 所在地:逗子市新宿2丁目
- 建物概要:木造二階建 スレート葺
- 建築面積:138m2
- 建築年代:昭和7年(1932年)
逗子海岸近くに位置しています。東を玄関とし、内部は中廊下平面で、玄関脇に洋室の応接、南面中央に続き座敷と広縁、南西に洋室の書斎を配し、庭を臨みます。軒の出を押さえ、窓庇を水平に連続させた平明なデザインの昭和前期の住宅です。
※見学はできません。
須藤家住宅旧ボイラー室 令和4年2月17日国登録有形文化財第14-0309号
- 所在地:逗子市新宿2丁目
- 建物概要:木造平屋建 鉄板葺
- 建築面積:8.8m2
- 建築年代:昭和21年(1946年)頃
須藤家を住宅として接収したGHQがボイラー室として建てたものです。主屋北側に位置し、切妻造鉄板葺平入の平家建東西棟で、南に戸口、三面に高窓を開け、外壁は下見板張としています。内部はかつて西にボイラー、貯湯槽、東に石炭庫を配していました。戦後の歴史を伝える建物です。
※見学はできません。
5.旧本多家住宅主屋
令和4年10月31日国登録有形文化財第14-0319号
- 所 在 地:逗子市山の根2丁目
- 建物概要:木造二階建 スレート葺
- 建築面積:216m2
- 建築年代:昭和13年(1938年)
JR逗子駅近くの山裾に建つ洋風住宅です。
建築主は東京京橋に本店を置いた本多商店(ランプ製造販売)の本多庄作氏(1897-1977)。
外壁はモルタル仕上げ大壁で、開口部のまわりやコーナーなど要所をタイルや擬石で装飾し、バルコニー腰壁にはメダリオンを飾っています。正面西にポーチと玄関、東に吹き抜けのリビング(居間)を配します。
設計は久米権九郎によるもので、束ね式の小柱と横架材を用いた「久米式耐震木骨構造」が特徴です。モダニズム建築が隆盛を迎える時期に、 外観、内部ともに古式な洋風意匠を残していることも興味深い点です。
※見学はできません。
6.旧逗子市郷土資料館
未登録
- 所在地:逗子市桜山8丁目2275
- 建物概要:木造平屋建 瓦葺
- 建築面積:266.1m2
- 建築年代:大正元年(1912年)頃
当初は横浜の実業家の別邸として建てられましたが、大正6年から昭和19年までは徳川家第16代当主 徳川家達(いえさと)が使用しました。建物の平面はT字形で、西側に8畳の和室が一列に4部屋並び、それに沿って縁側が一直線に伸びています。冬晴れの日などには、この縁側から相模湾に浮かぶ江ノ島の背後に丹沢、富士の山々を一望することができます。
昭和58年から郷土資料館として使用していましたが、令和2年3月をもって閉館しました(内部をご覧いただくことはできません)。
このページに関するお問い合わせ
教育部社会教育課文化財保護係
〒249-8686 神奈川県逗子市逗子5丁目2番16号
電話番号:046-872-8153
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。