広報ずし 2026年1月号 NO.1007 3面 Interview 市文化財保護委員 伊藤一美さん(小坪)  古くから人が住み、かつては政権都市だった鎌倉に隣接する逗子。古代から近世にかけての建造物や史跡、美術品などのさまざまな文化財が、当時のストーリーも含め数多く残っています。  例えば、神武寺のみろくやぐらは、鶴岡八幡宮の舞楽士・中原光氏のお墓で、被葬者の名前が分かる大変貴重なやぐらです。また岩殿寺には、鎌倉時代に源頼朝や北条政子、源実朝らが参拝したと「吾妻鏡」に記されています。 “頼朝や政子は、鎌倉からどのルートで岩殿寺まで行ったのだろう”など幅広い見方を持って見ると、文化財の価値や歴史を知る楽しみをより深めてくれるでしょう。  他にも、神武寺周辺の岩の裂け目からにじみ流れる水分で生育する岩隙植物群落や、池子神明社の祭礼で使う神輿も市が指定する貴重な文化財。地域に根付いたものが多いことも逗子の特長です。文化財から逗子の歴史や魅力を再発見していただきたいです。 *伊藤さんが講師を務める「歴史散歩」のイベントを13ページに掲載しています。 市内の重要文化財 市内には、国・県・市、それぞれの指定文化財が合計35件あります。ここでは、建造物として指定された4件の文化財を紹介します。【ホームページ番号】1004544 五輪塔(東昌寺) 国指定重要文化財 高さ141cmの大きな五輪塔です。石に刻まれた銘文から、鎌倉時代の1303年に、御家人・二階堂氏にゆかりのあった僧侶「行心」のための供養塔として建てられたことが読み取れます。年代が明らかで、形も整っている貴重な石塔 です。 薬師堂(神武寺) 県指定重要文化財 安土桃山時代の1594年に建立され、江戸時代の1666年に再興されたと考えられるお堂。内部には秘仏の薬師三尊像が安置されています。鶴岡八幡宮の修造を手掛けた大工による建築とみられ、江戸時代初期の古い様相を残したお堂として貴重です。 観音堂(岩殿寺) 市指定重要文化財 江戸時代中期の1728年に再建。伝統的な密教本堂の建築形式を基本としつつ、木組みには禅宗様の要素を。細部には、江戸時代に流行した和様のデザインもみられます。鎌倉周辺における近世寺院建築の変遷を知る上で、大変重要な建物です。 四脚門(海宝院) 市指定重要文化財 2本の主柱の他に、4本の控え柱で支える四脚門と呼ばれる形式の門で、海宝院が開かれた安土桃山時代に建立されたと考えられます。鎌倉を含む周辺地域でも比較的古い門で、弓のように湾曲した梁などに禅宗様建築の特徴がみられます。