広報ずし 2024年2月号 NO.984 3面 認知症って何だろう? 日本認知症学会専門医・指導医の資格を持ち、日頃から認知症の診察にあたる三壁先生に、認知症について詳しく話を聞きました。 Interview みかべ脳神経外科クリニック 逗子市認知症初期集中支援チーム 三壁敏雄 医師 認知症にはさまざまな種類・症状があります  認知症は、脳のダメージなどで記憶力や判断力といった認知機能が低下し、日常生活に支障が出てくる状態の総称です。約7割がアルツハイマー型認知症で、他にもいくつか種類があり、それぞれ原因や症状も違います。また、同じ種類でも人によって進み方や出てくる症状も変わってきます。  問診やテスト、CT・MRIなどの検査で診断しますが、現在、慢性硬膜下血腫など一部を除き、認知症を根本から治す治療法はありません。進行を緩やかにする薬や症状に合わせた薬を処方する診療が一般的です。 気になることがあれば早めの相談・受診を  加齢による物忘れは、誰にでもあって当たり前。自立した日常生活が送れているなら認知症ではありません。ただ、認知症になる手前の軽度認知障害(MCI)という状態も考えられます。この段階では、適切な処置や対応で改善する可能性もあります。一方で、下の表にあるように、日常生活を送る上で困るような症状が出てくると認知症の疑いがあります。特に家族が「ちょっと違うな、おかしいな」と感じたら、まずはかかりつけの主治医に相談する、または、もの忘れ外来などの医療機関に足を運んでみてください。 認知症本人と家族が穏やかに暮らせるように  認知症と診断されたら、家族で抱え込まずに社会的支援なども積極的に活用するようにしましょう。介護保険申請をして、デイサービスに通うのもいいでしょう。最も気を付けたいのは、本人の自尊心を傷つけないことです。周りが怒って厳しい言い方ばかりしていると、本人が症状を取り繕うようになり、不安な気持ちからうつ病や引きこもるようになって進行が早まることがあります。家族はとても大変だと思いますが、できないことがあっても「それでいいんだよ」と受け入れてあげてください。そして、辛いことは行政や地域を頼り、私たち医者などにも相談してください。  一人一人が認知症の正しい知識と理解を持ち、温かい支援にあふれた社会になるといいなと願っています。 物忘れ、MCI 次のような症状があっても、自立した生活を送れている □同じ質問をする □置いた場所、しまった場所を忘れる □蛇口の閉め忘れ、スイッチの消し忘れ □会話がかみ合わない □少し複雑な話は理解できない など 認知症 次のような複雑な動作ができず、日常生活に支障が出ている □薬の管理ができない □ATMでの出金ができない □現金の支払いで小銭を使わない □電車やバスを利用して目的地にたどり着けない など *項目は目安で、医学的な診断基準ではありません。