広報ずし 2023年9月号 NO.979 2面  3面 がんと向き合う 母娘インタビュー 毎年9月は“がん征圧月間”。がんの正しい知識や検診の大切さを広める活動が全国で行われます。今月は、がん経験者である府川さんと娘のきずなさん親子に、自身の体験や子宮頸がんをテーマに話を聞きました。(本文中敬称略) 【問い合わせ先】国保健康課 【ホームページID】1009092 聞き手・進行 国保健康課 武藤未央(保健師) “まさかはあり得る”と気付きました がんの正しい知識を持ちたいです たまたま見つかった甲状腺乳頭がん ―府川さんは、2016年に甲状腺乳頭がん*1にかかったことを公表しています。発見の経緯や治療方法など、当時のことを聞かせてください。 府川 娘2人の子育てが忙しくて自分の体のことは後回しの日々でしたが、その時はとても体調が悪くて近所の診療所を受診したんです。エコーで診てもらったら、首に気になる影があるので大きな病院で検査しましょうと。結果、3cmの悪性腫瘍が見つかり、甲状腺乳頭がんと診断されました。手術で切除し、幸い転移などもなく、現在は定期検査を受けながらも経過は良好です。 ―それまで、がん検診は受けていましたか。 府川 現役時代はくも膜下出血など命にかかわるけがも経験していたのに、子育てが忙しかったこともあり、健康診断やがん検診は積極的に受けていなくて。がんが発見された時は、「まさかってあり得るんだ」と衝撃でした。 ―娘さんにもすぐに伝えましたか。 府川 きずなが小学校6年生、妹は4歳とまだ小さかったので悩みましたが、やはりちゃんと伝えようと話しました。きずなは、妹の幼稚園のお弁当作りや読み聞かせでの寝かしつけなど、入院中の私の代わりに妹のサポートをしてくれました。そうすることで、私の気持ちの負担を減らそうとしていたみたいです。 ―当時のことをきずなさんは覚えていますか。 きずな はい。がんという病気を身近に感じたことがなかったので、とてもショックだったことを覚えています。その時は、がんにもいくつか種類があることすら知らなかったので、父や祖母に聞いたりしました。母はいつものように笑っていましたが、私たちに心配をかけないようにしているんだろうと気付いていました。 府川 本当に心配をかけました。でも、子どもがいてくれたから頑張れたし、気持ちの面でも支えてもらい、家族にはとても感謝しています。 子宮頸がんは若い世代に多いがん ―若い世代に知ってもらいたいがんの一つが子宮頸がん*2です。日本では年間に女性約70人に1人が罹患し、約350人に1人が亡くなっているというデータもあります。出産から子育て中の若い世代に多く発症し、“マザーキラー”という別名があるくらいです。きずなさんは、予防効果がある子宮頸がんワクチンの接種対象ですが、接種しましたか。 きずな ワクチン接種は怖いという気持ちもありながら、母と話してやはり接種しようと予約はしていました。ですが、当日体調を崩してしまい接種できませんでした。その後、まだ怖いという気持ちもありましたし、高校卒業やデビュー戦などが重なり忙しくなってしまい、まだ接種できていないです。 ―確かに、ワクチン接種後の副反応などの報告で、積極的な接種勧奨を控えていた時期がありました。怖い気持ちを抱くのは当然ですよね。ただ、ワクチンの安全性や接種による有効性など最新の知見から、積極的な接種勧奨を再開しています。ワクチンで予防できるのは、がんの中では子宮頸がんだけです。 府川 私も娘に接種させるか最初は悩みましたが、がんを予防できることを考えたら接種させたいと思いました。 ―積極的に接種している諸外国に比べたら、日本は接種率がとても低く*3、さらに接種を控えていたことも重なり子宮頸がんを発症する人の割合が増加傾向にあります。 きずな ワクチンのことをよく知らず、分からないことへの恐怖だったので、自分できちんと理解した上で接種を考えたいです。 未来の自分のためにがんと向き合おう ―がんは早期発見が重要です。きずなさんも、20歳以降は市の子宮頸がん検診の対象になります。子宮頸がんは自覚症状がほとんどないまま数年から10年ぐらいかけて進行していく性質があります。検診では、がんになる前段階の状態でも早期発見できるので、ワクチン接種に加えて検診もぜひ受けていただきたいです。 きずな 20歳で検診を受けられるとは知りませんでした。この機会に自分で調べて、ワクチン接種や検診を受けようと思います。 ―市のホームページで、子宮頸がんのワクチンや検診について詳しく説明しているので参考にしてください。最後に、がんを経験した府川さんだからこそ伝えたいことはありますか。 府川 私がかかった甲状腺乳頭がんは気付きにくいがんの一つと言われています。ぜひ皆さんにも知っていただきたいと当時は公表しました。そして、どのがんにしても検診などで自分の体をしっかり診てもらってほしいです。ありきたりですが、健康が第一です。 ―自分の未来のために、防げるものはワクチンで防ぎ、検診でしっかり体をチェックしながらこれからも長く活躍していただきたいです。 今回は、実際の体験談や正直な気持ちなど、貴重なお話をありがとうございました。 府川・きずな ありがとうございました。 *1 首にある甲状腺の一部にできるがん *2 子宮入口の子宮頸部にできるがん。多くはHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因とされる *3 子宮頸がんワクチンを接種した女子の割合(2019年) カナダ 83% イギリス 82% オーストラリア  79% イタリア 52% アメリカ 49% ドイツ 43% フランス 33% 日本 1.9% 出典:広報誌「厚生労働」2022年5月号 府川唯未さん プロフィール 元女子プロレスラー。2001年 の引退後は、タレントやドッグライフカウンセラーとして活動。現在は、湘南ビーチFMのパーソナリティとしても活躍中。夫でプロレスラーの田中稔選手、2人の娘と市内で4人暮らし。 田中きずなさん プロフィール 2004年生まれ。両親の影響で、幼いころからプロレスラーの夢を抱く。高校卒業後の今年4月、プロレスリングWAVEから念願の女子プロレスラーとしてデビュー。